【陵南監督田岡の戦略と痛恨のミス】名作スラムダンクに学ぶインクルージョンマネジメント

【陵南監督田岡の戦略と痛恨のミス】
名作スラムダンクに学ぶインクルージョンマネジメント

スラムダンクに登場する監督陣の中で、
戦略、発言とも積極的な濃い目キャラ「田岡茂吉」
チームを構築する組織戦略、人材探索、
チーム内の人材育成、
メンバーの良さを活かす為の戦術、ゲームメイク、
広範にわたり論理的に策を積み上げていく。

一方でメンバーの心理に配慮した親心や、
場面に応じ一喜一憂する様など、
人間味溢れたキャラでもある。

失敗には終わるが三井、宮城、流川など
湘北のメンバーにも声をかけ、
魚住、仙道などのメインメンバーだけに
満足しない貪欲さからも、
人材に関する意識の高さが伺える。

育成面においても配慮を見せる。
でかいダケと陰口を叩かれる1年魚住を励まし、
3年の時に陵南初のインターハイ出場という具体的目標を明示し、
魚住との間に組織としての共通目的を成立させる。
魚住はそんな励ましの中、苦しい時期を乗り切った。

もう1人、福田吉兆。
思い込みの怖さを垣間見る事例となるわけたが、
誤解とはいえ田岡なりに福田に期待し、
意識的に成長を加速させようと力を注ぐ。
結果的には裏目にでてしまうわけだが、
成長速度を加速させる為のアクションを起こした。
組織を強くする為に意識的な育成を意識しているのだ。

次は隠れた才能の発掘だ。
海南戦では仙道をポイントガードに据える。
視野の広さ、パスセンスなど本人は才覚を発揮し、
チームも活き活きとプレイする。
海南戦でしか実施されなかったか、
チームの幅を広げたことは間違いない。
湘北戦でも、ディフェンス対策で越野を下げ、
池上を入れた際に、ボール運びのサポートを指示。
海南戦で戦術幅を広げていた為、
チームとしては「あっそっか」という
レベルで柔軟に対応できる力を付けていた。
個々のプレイの領域を広げる眼力を持っている。

実際の試合展開にも独自の戦略眼をもつ。
海南戦では、前述のように
ポイントガード牧への
対抗策として仙道をぶつけた。
試合巧者牧と技巧派センター高砂の巧さに
魚住がやられストーリーは崩れるが、
それでも諦めずゲームをマネジメントする。

もう1つは湘北戦だ。
ゲームのストーリーを見抜き、展開していく。
花道の予想外の動きによる魚住の4ファールという
誤算により物語は大幅に狂った。
しかし粘り強く、自らの描いたストーリーの進展を待つ。
そもそも湘北が抱える問題点が
監督安西の不在により必ず露呈し、
顕在化した後は対応不能に陥ると
確信していたからだ。
孫氏曰く、「彼を知り、己を知れば百戦危うからず」である。

しかし、人間味溢れる田岡は
対湘北戦において、残念ながら、
練習試合、公式戦とも同じミスを犯してしまった。
能力の高いメンバーに対し
徹底して警戒する慎重さを見せる一方で、
能力が高くないと判断した相手を
フリーにするリスクを抱えてしまうのだ。

2試合とも共通して犯したのは、
素人桜木と層の薄いベンチ要員である
メガネ君こと木暮への対策である。
池上に対し、流川、三井にボールがいったら
即ダブルチームにつけと指示。
結果選手はボールが回る前にマークに走った。
真面目で忠実が故だ。
そして花道から木暮へのパスが通り、
赤木の「うてー」との叫び。
木暮は無心でシュートを放つ。
習慣化まで辿りついているが故の無心だ。
ボールは綺麗にゴールに吸い込まれる。
ポイントは、このシーンが2試合両方に存在することだ。
練習試合の時よりも更に脅威を増した
湘北スタメン陣に対し意識が高まりすぎた。
ダブルチームに行くのはパスがでた
瞬間であるべきなのだろうが、
その前に動いてしまう。
脅威が高まり指示の重みも増してしまったのだ。
「田岡」は木暮にもしっかりつき、
パスが出てから動くよう強調しなければならなかった。
しかし自らが描いたストーリーに
心酔しきってしまった。

花道については
「奴は陵南にとっても不安要素なのか?」と自問し、
メガネ君については、
「奴も3年間頑張ってきた男だった。 侮ってはいけなかった」
という言葉を残す。 まさに名言だ。
木暮は一般人キャラで他の超人的なメンバーとは明らかに違う。
こういったタイプが勝負を決めるのが、
スラムダンクという作品の醍醐味でもある。
組織としていかにこういったメンバーを育成するか‥‥
スターの存在よりもチーム力に繋がる条件である。

かつてサッカーの日韓ワールドカップ予選において、
フィリップトルシエ監督が、
フィールドプレイヤーについては
中田英寿に加えて明神が9人いればいいと発言した事があった。
組織の全体最適の為に汗を流す
能力の高いユーティリティプレイヤーと
そこに強烈なアクセントを加える
王様の存在があれば強いチームとなることを例えたものだ。
わかる人はもうだいぶ少なくなったかもしれないが、
9人の明神がいるチームは恐ろしいチームだ。

少々話がそれたが、
結果がでなかったとしても
私は、監督田岡が大好きだ。
彼は意識して人を活かそうとしている。
選手に目をつぶらせて、
お前らはどのチームよりも厳しい練習をしてきた
と言い聞かせ、自身をもたせるくらいだ。
彼はインクルージョンを体現しようとしている。

いま目の前にいる人間の力を最大限に活かす為、
戦略を整え、戦術を実行する。
メンバーを鼓舞し、理解を示す。
インクルージョンマネジメントの
見本のような存在である。
あとは海南のように勝ちを
経験することでチームは飛躍する!
監督田岡にあと勝利という経験が
積み重なる事で勝者になる!
仙道が3年の年・・・
陵南と湘北がインターハイにいったのだろうか?
そんなことを思ってしまう。
人の力を引き出そうとする
インクルージョンマネジメント力の高い
監督田岡は、
きっと陵南をインターハイに導いていただろう。 (^^ゞ

ブラックバスケットボールフープ
スペンサーリンドによる写真Pexels.com

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