新入社員がすぐ辞める理由は“目標設定”のミスだった?
入社から数週間、配属先で研修を受けながら仕事に取り組む新入社員。
彼らはまだ仕事そのものに“やりがい”を見出せていない段階であることが多いでしょう。
しかし、自分自身の仕事・会社に対する満足度には大いに関心があり、この会社で今後どのように成長できるかを考え漠然とした不安を抱えています。
現状では、上司や先輩からは優しく接してもらえており、その気遣いも感じているでしょう。一方で、「自分が何を期待されているのか」「いつまでに何を身につけるべきか」がはっきりしない状態が続くと、「このままここにいても意味がないのでは」と感じてしまいます。
その結果、やりがいを感じ取る前に、退職という選択肢を取る新入社員が出てきてしまうのです。

なぜ「目標の提示」が新人教育のカギなのか?
今の若手新入社員は、キャリアの初期段階では、組織への貢献よりも“自分がどこまで成長できるか”を重視する傾向にあります。
そのため、仕事の意味や楽しさを感じる前に、成長の道筋が見えないと不安を抱きやすくなります。
だからこそ、配属直後に「何ができれば一人前なのか」を明確に提示することが必要で、そうすることでその不安を取り除く第一歩につながるのです。
目標の提示は、今の仕事の意味づけをし、「自分がここで何をして、どう進んでいけばいいのか」という未来への安心感を与える役割を果たします。
適切な目標の立て方
新入社員にとって「目標」は、この会社でこんな姿になりたいという未来像を叶えるための“物語の道しるべ”です。
自己成長への意欲はあるものの、まだ仕事に対する情熱や、やりがいは芽生えていない段階。
だからこそ、目指す未来像が明確に示されることで、現在の業務にも意味が生まれます。
そこで、次のように2つの時間軸で目標を設計し、その運用の仕組みを整えることで成長のサポートがスムーズに進みます。
1. 初期の目標設計
(1)中期的な担当業務の全体像を示す
「3年後を目標に、●●業務を単独で回せるようになること」
「必要なスキルは〇〇、△△、□□で、それらを活用して●●の質を上げお客様に貢献していくこと」
(2)最初に取り組む短期目標を提示する
– 「3か月後には、商品の仕分けと検品を単独で完了できる」
– 「5か月後には、クレーム対応の初動を自信を持ってこなせる」
2. 成長実感を与えるフィードバックの仕組み
– 週1回の1on1で「できるようになったこと」を一緒に確認
– 月次で自己評価+上司コメントを記録し、成長を可視化
「目標提示」を組織で仕組み化する方法
こうした目標提示は、個々の上司の裁量に任せるだけでは限界があります。
“自分はここで成長できる”と感じてもらうためには、会社全体として育成の方針を揃え、明文化し、共有する仕組みが必要です。
例:
・「3年後に目指す姿」のテンプレート化
・期間ごとに“到達を期待するレベル”の可視化
・上司と定期的に振り返る面談機会の設定
新人が自分の成長段階を確認できる環境こそが、安心と継続意欲につながるのです。

“新人の未来設計”
企業にとって本当に大切なのは、目の前の新入社員に「この会社で成長できそうだ」と感じさせる“未来の地図”を描いてあげることです。
それは、ただのスキル習得だけではありません。
「3ヶ月後、君はこんなふうに成長しているはず」
「この工程ができるようになると、次は〇〇の仕事に挑戦できる」
「3年後の君はこんな風に活躍しているはず」
――こんな風に、本人の未来を“ストーリー”として伝えることが、何よりのモチベーションになります。
そのためには、会社全体で連携し、研修設計・目標提示・成長支援を一貫してサポートする体制を整えることが求められます。
【まとめ】新人の離職を防ぐには、最初に2つの目標提示!
新入社員が最初に求めているのは、“この会社での未来に希望が持てるかどうか”です。
業務へのやりがいや組織への愛着は、まだ形成されていない段階。
だからこそ、配属直後に「ここで自分は成長できる」と実感できる目標設計がカギになります。
・「一人前の状態」(中期目標)を明文化し
・到達までのステップ(短期目標)を示し
・定期的に振り返り、成長を実感させる
そして、それを現場任せにせず、全社で仕組み化していくことが、新人の定着と戦力化を加速させます。
描くべきは、目の前の新人の“成長ストーリー”。
その第一章に、「あなたはこの道を進んでいくんだよ」と目標を提示することこそが、早期離職だけでなく3年後の定着にも効果を発揮します。