■なぜ内発的動機づけが重要か

 いつの時代もささやかれる「最近の若手は…」、かつて私自身も言われたことがある言葉だ。私にとって諸先輩にあたるキャリアの方々も自身が社会人デビューした頃を思い出せば同様なのではないだろうか。

 特に「働き方改革」時代となった現在の若手社員にとって、労働時間規制や有給休暇を含めた休日取得、プライベートの充実は既にスタンダードとなっている。すでに長い間、社会で働いている層にとっては、「口でいうのは簡単だけど、実際にやるのは…」と一筋縄ではいかない感覚がある。若手にとってはこれが「実現されている職場を選択したい」という感覚であり、ここには大きなギャップが潜んでいる。

 そうはいっても新入社員を中心に若手を採用している職場では、早く育成して、戦力化したいと考えている。しかし実際問題なかなか上手くいかず、若手から「マニュアルは?」「言ってくれればやります(実際はできないのだが…)」といった発言がでて苦労しているのが典型例だ。「自ら考えて行動しないんだよ…」という悩みをよく耳にする。

 そこで近年、重要視されているのが内発的動機づけだ。指示、命令、評価、褒賞といった本人以外の働きかけによって行動を促すのが「外発的動機づけ」であり、本人自身が自らの意思で行動するのが「内発的動機づけ」だ。シンプルに言えば、外野がいくらワーワー言っても本人がその気にならなければ、行動は変わらないということだ。

 私は1975年生まれで団塊Jr世代の最後尾であるため、偏差値教育、受験戦争時代に育ってきた。そのため、常に競争にさらされており、働き始めても競争意識を持っていた。個人差はあるものの、総じて言えばこの時代の若手は、そこを刺激すればいいのでわかりやすい構造だった。

 一方で、現在の新入社員は現役学卒なら1998年生まれ。バブル崩壊後のスマート消費、みのたけ消費といった時代に育ち、「別に出世したいとは思わない」「お金は程々にあればいい」といった価値観を持っている(もちろん全員ではない)。そのため、出世やお金ではなく、個々にもつ「やりがい」や「自己実現」といった価値観にアプローチ(ここは外発の領域)し、本人が自ら「気づき」「納得」し、「なるほど、やってみよう」とならなければ「内発的動機づけ」までたどりつかない。

 つまり、かつてから内発的動機づけは重要であったが、出世や評価で働きかければ本人の動機づけにつながり「わざわざ論じなくても良かった時代」から、個別対応が重要で「しっかりと論じなければならない時代になった」と解釈するのが正解かもしれない。「なんのために働くか」をわざわざ論じなければならない時代になったのだ。

■イマドキの若手を動機づけるには、まずは「はじめの一歩」が肝心

 働き方改革とは別に、現在の中堅層以上と若手との感覚ギャップには、就職戦線の変化が大きく影響を及ぼしている。バブル崩壊以降、就職氷河期が長く続き、今の40代などには「ロストジェネレーション」なる言葉が使われることもある。

 2000年代中盤にやや回復期があったが、2008年のリーマンショックによって再び状況は悪化する。2011年に震災による混乱があった後、徐々に回復し、2013年第4四半期に求人倍率は1.0を超える。その後、状況は好転し人手不足に顕在化が始まる。その状況はコロナウィルスによる経済活動の一時停止直前まで、過去最高のレベルで高止まりしていた(今後は激変する可能性がある)。

図:求人求職、および求人倍率の推移~厚生労働省 令和2年4月28日報道発表

 結果として、就職氷河期時代の活動は熾烈を極め、業界研究、自己分析等を重ね、面接で言葉にして表せなければ、なかなか希望にたどりつくこともできず、下手をすると内定が取れない…という状況だった。

 今は逆に企業側が若手に「ぜひ来てくれ」という状況に変化してきているため、学生側が企業を品定めしているといっても良い状況だ。そのため、もちろん個人差はあるが、総じて言えば自己分析が甘い。つまり「自分が何をしたいのか」について掘り下げきらない(又は浅い)まま社会人デビューをしているのだ。ここを特性としておさえておきたい。

 そうは言っても悪い事ばかりではない。氷河期時代は結果として入りたい企業や、やりたい職種にたどりつけないケースも多かった。そのため新入社員研修の段階で、「何とか就職することができた…」どまりで、夢や希望に満ちたフレッシュな雰囲気をもっていないケースも多かった。むしろ自身の希望がかなわなかった落胆や、今後への不安を感じていたのだろう。

 一方、近年顕著なのが、自分の意思で企業を選択しているので、漠然とした夢や希望を抱いており、目を輝かせているケースが多いのだ。研修時に、この会社で将来やりたいことをやろうと思ったら、スタートは信頼関係の構築が重要だ…と説いたり、このようにアクションをしていくことで、希望に近づいていく…といった説明に敏感だ。やる気がわいてくるという意味では、私が外発的に「こうすると、皆さんの希望がかないやすいですよ…」となげかけることで、本人は「なるほど。やってみよう…」と素直に行動に移していく。

 漠然とした夢、希望に向かってではあるが、そこに向かって頑張ろう…という「内発的動機づけ」が成立するのだ。夢や希望について本人たちに語らせてみと、上手く言葉になっていないケースが多いが、それでも初期段階でのモチベーションには充分だ。

図:まっすぐ育てる

 初めにここを一押しすれば、まっすぐ進み始める。一方で、「ビジネスマナーなんだから当然身につけなくてはならない」と目的を説かずに強要すると、「仕事とは自分の意思に関係なく、やれといわれたことをやる場なんだ」という解釈となり、感情のスイッチを切ってしまう。自身の感情を押し殺し、生きがいはプライベートで達成すればよいと整理してしまうのだ。

「はじめの一歩」をまっすぐ踏み出すか否か、若手本人にとっても組織にとっても、非常に重要なタイミングなのである。

■2歩目以降、まっすぐ進ませるために

 2歩目以降は、しっかりとした本人の「内発的動機づけ」が必要となる。一歩目は漠然とした夢や、希望でも踏み出すことはできる。どちらにしても最初は覚えることだらけ。気持ちが正面を向きさえすれば良いのだ。

 一方で、次の段階に進むためには、そのままでは動機づけが不足する。仕事をしていれば、様々な壁にあたり、そこを乗り越えていく必要があるが、漠然とした夢や希望ではストレス耐性が不足してしまう。「何か違う」「こんなことがしたいわけではない」という思いの方が強くなっていく。誰でも壁にぶち当たることは楽しいわけはない。そこを乗り越えた先にある目的のために頑張ることはできても、自身にとっての「働く目的」がはっきりしていなければ、簡単に折れてしまうのだ。

 そこで重要なのが自己分析だ。かつては企業に入る前にやるケースが多かっただろうが、そこが抜けてしまっているのであれば、後からでもやらなければならない。自分史を書き、楽しかったこと、充実していた時期、その根本にある価値観がなんなのかを言葉にしていくのだ。私自身、就活時にも実施したが、独立前にもう一度やり直した。経験が積みあがれば感じ方も違ってくるからだ。

図:働き方改革時代の若手育成

参考:働き方改革時代の若手部下育成術 セルバ出版 専田政樹著
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 価値観を分析したら、実現したい理想像を描く。仕事に求めるやりがいは何か。お客様にどのように思われたら最高か。或いはどのような職種につきたいか。「ポストが高まるとより大きなことができるが、どんな規模のことをしたい?」といった投げかけも有効だ。

 またプライベートを充実させることも忘れてはいけない。趣味は?家族構成は?住居は?あらゆることで理想を考えさせていく。実現できるかどうかは別問題であるが、それに向かってどのように頑張るか…と考えることが大切だ。

 少し角度を変えて、お金の勉強をすることも大切だ。育った時代の影響もあり、お金に執着しないケースも多いが、自分のやりたいことをやろうと思ったらどのくらいお金が必要で、人事制度上「どのようなキャリアを描けば目標額に届くのか」を合わせて思考させると効果的だ。ファイナンシャルプランを考えるといったアプローチをしている若手は数少なく、確かな情報を持たないまま、なんとなく「そこまでお金はなくても…」と思っているからだ。

 2歩目で折れてしまうのが先か、強い思いを持つのが先か、働きかける側からすれば勝負となる。折れてしまってから、もう一度もとに戻すのは想像以上に大変だ。初期段階のアプローチをしっかりと設計し、ステップを踏んで若手の「内発的動機づけ」に取り組むことが効果的な若手育成を果たすためのポイントとなる。是非とも計画的に狙って活動をしていって欲しい。

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專田 政樹
株式会社 せんだ兄弟社 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士
(一社)JDIO(日本ダイバーシティ・マネジメント推進機構)
           認定 ダイバーシティ・コンサルタント
(学) 産業能率大学総合研究所 兼任講師
著書:働き方改革時代の若手部下育成術
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〒 :104-0045
住所:東京都中央区築地2-15-15セントラル東銀座619号
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著者プロフィール

専田 政樹(弟)
専田 政樹(弟)中小企業診断士
7&iグループ出身。
大企業10年、中小企業10年のマネジメント経験を活かし、制度構築、業務改善、人材育成等で企業支援にあたる。
企業在籍中に管理部門責任者として営業利益▲3%から1年で+0.5に改善した実績をもつ。
多様な人材の能力を引き出し相乗効果を出すダイバーシティマネジメントを専門分野とし、既存人材活性化を得意とする。