人事評価制度の作り方|階層別に「役割・能力・成果」から評価項目を設計

人事評価制度の作り方を役割・能力・成果の3視点から設計する考え方

当記事は階層別の評価項目の作り方を実務目線で解説します。
役割・能力・成果を整理し、評価項目・基準へ落とす6ステップと、管理職と一般社員の違いを具体例で紹介していきます。


評価項目をつくる、あるいは見直そうとするとき、

「どんな評価項目にすべきか……」

「成果と能力をどう評価するか……」

「管理職は何を評価項目にするか……」

といったところから検討を始めるケースは少なくありません。

そこで、

「主体性」
「協調性」
「責任感」
「コミュニケーション力」

といった項目を並べ、管理職には「リーダーシップ」「マネジメント力」を加えていく。

一見すると自然な進め方です。

ところが、この流れで内部検討を始め、途中で頓挫しているケースも少なくありません。

評価項目が個別項目の集合体になり、

「なぜ、この項目を評価するのか」

が曖昧になるからです。

さらに、こんな状態もよく見られます。

一般社員と管理職で、ほぼ同じ評価シートを使っている。

管理職になったので「リーダーシップ」を1項目追加した。

しかし、本人からすると、

「課長になっても、評価項目は以前とほとんど変わらない」

という状態です。

これでは、会社が課長として何を期待しているのかが伝わらず、エースプレイヤーからマネージャーへの役割転換が進みにくくなります。

こうならないためには、評価項目を考える前に、

「会社が、それぞれの社員に何を期待しているのか」

を言語化することが重要です。

そして、もう一つ大切なことがあります。

評価の目的は、社員を採点することだけではありません。

評価の仕組みをつくることで、

「何をできるようになってほしいのか」=能力の蓄積

と、

「その能力を使って何を実現してほしいのか」=能力の発揮・成果創出

を明確にできます。

これが、上司と部下が日常の仕事について話し合うための共通指標になります。

つまり評価項目は、

「組織のマネジメント」と「人材育成」を同時に機能させるための仕組み

でもあるのです。

この記事では、この考え方をもとに、評価項目の作り方を具体的に考えていきます。

参考記事:評価制度全体の作り方(評価シートを作る前に決めるべきこと)は、こちらの記事をご覧ください。

1.人事評価制度は「採点する仕組み」だけではない

人事評価制度というと、昇給や賞与を決めるための仕組みというイメージを持たれがちです。

もちろん、評価結果を処遇へ反映することは重要です。

一方で、評価制度にはそれ以外にも大切な役割があります。

たとえば、

  • 会社が社員に求める期待・役割を伝える
  • いつまでに、何を、どこまでできるようになってほしいかを示す
  • 目指す目標や期待する成果を明確にする
  • 上司が進捗管理や日常の指導・育成に活用する
  • 本人と現在地や次の課題を共有する
  • 昇給・賞与・昇格などの判断根拠とする

といった役割です。

ここで特に注目したいのが、マネジメントと育成です。

社員からすると、

「会社は自分に何を期待しているのか」

「何ができるようになれば一人前なのか」

「次の役職やキャリアへ進むために、何を身につければよいのか」

が分かれば、仕事への取り組み方も変わります。

上司から見ても、

「今期はここまでできるようになろう」

「ここはもう一人でできているね」

「次はこの仕事を任せてみよう」

と、具体的な指導がしやすくなります。

この共通指標となるのが評価項目です。

評価項目は、半年に一度点数をつけるためだけにあるのではありません。

日常のマネジメントと育成を動かすための指標なのです。

※参考記事:すでに制度があり、運用や若手育成の観点から見直したい方はこちら

2.なぜ評価項目から考え始めてはいけないのか

先にも述べましたが、評価項目から検討すると、点の集合体の議論になりがちです。

出てきた項目自体が悪いわけではありません。

ポイントは、

「なぜ、その社員にそれを求めるのか」

が明確になっているかです。

一つひとつの項目を見る前に、評価項目全体を眺めてみてください。

それらを組み合わせたとき、

「会社として、こんな社員になってほしい」

という人物像が浮かび上がるでしょうか。

さらに、その人物像が日常の指揮命令や、会社が大切にしている組織文化と一致しているかも重要です。

次に、評価項目の具体性です。

たとえば「主体性」という言葉を考えてみましょう。

若手社員なら、

「指示された仕事について、自ら段取りを考えて進めること」

かもしれません。

一方、管理職なら、

「自部門の課題を自ら捉え、改善に向けて周囲を動かすこと」

といった感じでしょうか。

同じ言葉でも、役割が変われば求める行動は変わります。

そのため、

評価項目 → 期待すること

ではなく、

期待する役割 → 求める能力・成果 → 評価項目

の順番で組み立てることが重要です。

3.まず、階層ごとに「何を求めるのか」を分ける

ここでは分かりやすく、3つの階層で考えてみます。

階層求める能力求める成果
プレイヤー層自分で担当業務を遂行できる自身の業務目標を達成し、成果を創出する
マネジメント層他者を通じて業務を遂行できる部門・チームの目標を達成し、成果を創出する
上級管理職・経営層戦略を立て、事業を方向づけ、組織を導く事業を成長させ、経営目標を達成する

プレイヤー層にまず求められるのは、担当する仕事を自分でできるようになることです。

必要な知識や技能を身につけ、一定の品質やスピードで仕事を遂行し、自分に与えられた目標を達成する。

ところが管理職になると、求められるものが変わります。

自分だけが優秀なプレイヤーとして成果を出していても、管理職として十分とはいえません。

目標を設定し、部下へ仕事を任せ、進捗を確認し、必要に応じて修正を促し、育成しながら、

他者を通じて組織として成果を出す能力

が求められます。

さらに上級管理職や経営層では、自部門だけではなく事業全体を見ながら、戦略を考え、資源を配分し、組織を方向づけていくことが求められます。

つまり階層が上がることは、単純に「難しい仕事が増える」ということではありません。

求められる役割そのものが変わるのです。

プレイヤー層・マネジメント層・経営層ごとに求める役割・能力・成果を整理した図

※参考記事階層や役割をどう整理するかはこちら

4.同じ評価項目でも、階層によって「見る中身」は変わる

ここは評価制度を設計するとき、意外と見落とされやすいところです。

たとえば「主体性」や「進捗管理」という評価項目があったとします。

項目名は同じでも、階層によって求める中身は違います。

同じ評価項目でもプレイヤー層・管理職・経営層で見る中身が変わることを示した図
評価項目プレイヤー層マネジメント層上級管理職・経営層
目標設定与えられた目標を自分の行動計画へ落とすチーム目標を設定し、個人へ役割を割り当てる事業方針から重点課題を設定し、資源を配分する
進捗管理自分の仕事を管理し、遅れを早めに報告する部下・チームの進捗を確認し、課題へ介入する事業・部門横断でリスクを捉え、優先順位を修正する
育成・指導後輩へ自分が習得した仕事を教える部下の育成課題を捉え、経験機会とフィードバックを与える次世代の管理職・経営人材を計画的に育成する
改善担当業務の改善を提案・実行するチームの業務プロセスを改善する組織構造や事業の仕組みそのものを見直す
主体性自ら段取りを考え行動する自部門の課題を捉え、周囲を動かす未知の課題を見つけ、事業として意思決定する

評価項目名を階層間で共通にすること自体は問題ではありません。

一方、役割が大きく変わる場合は、評価項目そのものを変える方法もあります。

大切なのは、

「この階層では、この項目の何を見るのか」

が説明できることです。

これが曖昧なままだと、評価者は自分の解釈で評価するしかありません。

その結果、評価のばらつきや本人の納得感低下につながります。

5.能力蓄積と能力発揮は、一人の中に混在する

階層別に評価を考えるとき、もう一つ重要なのが、

能力蓄積と能力発揮を分けて考えること

です。

能力蓄積とは、まだできないこと、現在習得していることについて、

「いつまでに、何を、どこまでできるようになってほしいのか」

を示すものです。

一方、能力発揮とは、すでに身につけた能力を使って、

「どの役割を果たしてほしいのか」

「その能力を発揮した結果として、どのような成果を出してほしいのか」

を示すものです。

ここで注意したいのは、

「若手=能力蓄積」

「ベテラン=能力発揮」

と、人を丸ごと分類するわけではないことです。

営業担当と課長のどちらにも能力蓄積と能力発揮が同時に存在することを示した図

優秀な営業担当者が課長になった場合

営業担当者としては十分な経験があります。

  • 顧客開拓ができる
  • 商談ができる
  • 難しい案件にも対応できる

営業実務については、すでに蓄積した能力を発揮する領域です。

一方、課長としては初めてです。

  • 部下への目標設定
  • 役割分担
  • 進捗管理
  • OJTの指揮
  • フィードバック
  • 人事評価

マネジメントについては、まだ習得途中です。

こちらは能力蓄積の領域になります。

領域営業担当時代課長になった後区分
営業実務顧客開拓・商談・難案件対応を行う自ら対応するとともに、経験を部下指導へ活かす能力発揮
目標設定自分の目標を行動計画へ落とす課の目標を設定し、部下へ役割・目標を割り当てる能力蓄積
進捗管理自分の案件を管理する部下・チーム全体の進捗を捉え、必要に応じて介入する能力蓄積
部下育成後輩へ自分の仕事を教える部下ごとの育成課題を把握し、機会とフィードバックを与える能力蓄積

ここで重要なのは、

「新任課長だから成果をあまり求めない」ということではありません。

課長として部門成果は当然求めます。

同時に、

プレイヤーとしてすでに発揮できる能力

と、

マネージャーとしてこれから蓄積する能力

を分けて見るということです。

そして部長になれば、新たな蓄積領域が生まれます。

経営層になれば、戦略立案や事業経営という新しい能力を身につける必要があります。

つまり、

すでに発揮できる能力と、これから身につける能力は、一人の中に同時に存在する

のです。

なお、厚生労働省でも、仕事に必要な知識・技能や職務行動を整理し、人材育成や人事評価に活用できる「職業能力評価基準」を公開しています。

参考データ:厚生労働省「職業能力評価基準」

自社の「役割・能力・成果」を整理してみませんか?

評価項目を考える前に、

「この階層には何を期待するのか」

を一度書き出してみると、評価制度がかなり整理しやすくなります。

今回の記事の考え方をそのまま使える、

「階層別・人事評価制度設計ワークシート」

をご用意しています。

  • 階層ごとの期待役割
  • 身につけてほしい能力【能力蓄積】
  • 能力を使って実現してほしい成果【能力発揮】
  • 評価項目
  • 期待水準
  • 一段高い評価に値する状態

※自社分析用ツール:記事末の無料ワークシートを見る

6.評価項目の作り方|6つのステップ

では改めて、ここまでの考え方を、実際の制度設計へ落としていきます。

STEP1|評価制度の基本方針を決める

まず、自社の事業特性や戦略を踏まえて、

「評価制度を通じて、社員に何を大切にしてほしいのか」

を整理します。

たとえば、

  • どのような成果を重視するのか
  • どのような能力を伸ばしたいのか
  • どのような行動を定着させたいのか
  • どのような組織文化をつくりたいのか

といった視点です。

STEP2|階層ごとの期待役割を決める

次に、プレイヤー層、マネジメント層、上級管理職・経営層など、それぞれに何を担ってほしいのかを整理します。

必要に応じて、等級・役職・職種ごとに細分化します。

STEP3|求める能力と成果を分ける

次に、

「何ができるようになってほしいのか」

と、

「その能力を使って何を実現してほしいのか」

を分けます。

ここが、育成とマネジメントをつなぐ重要なポイントです。

STEP4|具体的な行動へ落とす

「主体性」「マネジメント力」といった抽象的な言葉だけでは、評価者によって解釈が変わります。

たとえば管理職の進捗管理なら、

  • チームの進捗を定期確認する
  • 遅れや課題を把握する
  • 必要な軌道修正を行う
  • 関係者へ状況を共有する

など、行動事実を確認できる状態まで具体化します。

STEP5|評価項目・評価基準を決める

ここで初めて、評価項目へ落とします。

評価項目は原則、

「1評価項目・1評価テーマ」

となるよう整理します。

たとえば、

「計画立案・進捗管理・納期遵守」

を一つの項目にするとします。

こんな場合はどう評価しますか?

  • 計画は良かった
  • 進捗管理は悪かった
  • でも納期は守った

評価しにくいですよね。

評価者個々の判断に委ねられ、評価のブレが大きくなります。

「上司が誰かによって評価が変わる」――よくある不満の一つです。

一方、

「進捗管理」

という一つの評価テーマについて、

  • 定期的に進捗を確認したか
  • 遅れを把握したか
  • 必要な修正行動を取ったか

を見るのであれば、一つの項目として評価しやすくなります。

さらに、

「どこまでできれば標準なのか」

「どの状態なら一段高い評価なのか」

を評価基準として明示します。

STEP6|日常のマネジメントで使う仕組みを決める

評価シートが完成して終わりではありません。

期初に期待を伝える。

日常の仕事で進捗を確認する。

必要に応じて指導する。

期末に振り返る。

そして次の育成課題を決める。

ここまで回って初めて、評価制度が機能します。

7.よくある失敗|階層を分けたつもりで、実は分かれていない

失敗1|管理職に項目を一つ足しただけ

一般社員の評価表に、「リーダーシップ」「マネジメント力」を追加しただけ。

これでは、課長として何が変わったのかが明確になりません。

重要なのは項目数ではなく、

「その階層で何を担うのか」

です。

失敗2|管理職になってもプレイヤーとしての成果ばかり評価される

管理職がプレイヤーを兼ねる会社は少なくありません。

兼務そのものが問題なのではありません。

問題は、管理職としての期待が曖昧なことです。

たとえば、

自分で売上を1,000万円つくる課長と、

自分個人は300万円だが、部下を育て、チームで5,000万円をつくる課長。

会社が管理職へ期待しているのが、

「他者を通じて組織として成果を出すこと」

なら、後者をきちんと評価できる制度でなければなりません。

そうでなければ、管理職は部下を育てるより、

「自分でやった方が早い」

という行動を選ぶようになります。

評価制度が、会社が求めていない行動を強化してしまうのです。

失敗3|階層を細かくしすぎる

精緻な制度をつくろうとして、階層ごと、職種ごとに評価項目を細分化しすぎるケースもあります。

設計上はきれいでも、評価者が使いこなせなければ意味がありません。

階層間で共通できる項目は共通化しながら、

「見る中身」を階層ごとに変える

方法も有効です。

制度の精緻さだけでなく、運用できるかという視点を忘れないことが重要です。

8.評価項目は、日常のマネジメントと育成に使ってこそ意味がある

評価制度で本当に重要なのは、半年に一度、評価点をつける瞬間だけではありません。

その間にある日常です。

期初には、

「今期、あなたにはここまでを期待しています」

と伝える。

日常では、

「ここはもう一人でできるようになったね」

「次はここを身につけよう」

と確認する。

期末には、

「何ができるようになったか」

「その能力を使って、どんな成果を出せたか」

を振り返る。

こうなれば、評価面談だけが突然現れる特別なイベントではなくなります。

評価項目は、会社・上司・社員の間で期待をそろえる共通指標です。

だからこそ、評価制度を「採点の仕組み」で終わらせず、

日常のマネジメントと人材育成を動かす仕組み

として設計することが重要なのです。

参考記事:評価結果と賃金制度をどうつなぐかはこちら

まとめ|評価項目を作る前に「何を期待するか」を決める

人事評価制度をつくるとき、最初から評価項目を並べる必要はありません。

まず考えるべきなのは、

この階層に、どんな役割を期待するのか。

何ができるようになってほしいのか。

その能力を使って、何を実現してほしいのか。

ということです。

そこから、

役割
↓
能力・成果
↓
行動
↓
評価項目
↓
評価基準

へ落としていきます。

この順番で考えれば、評価制度は単なる採点表ではなくなります。

社員に期待を伝える。

上司が日常のマネジメントに使う。

本人の成長を支援する。

そして、その先の成果へつなげる。

評価項目は、マネジメントと育成を動かすための仕組みなのです。

階層別「人事評価制度設計ワークシート」
無料ダウンロード


「自社の場合はどう整理すればいいだろう」

と思われた方は、実際に書き出してみてください。

今回の記事の考え方をそのまま使えるExcelワークシートをご用意しています。

シート1|階層別「期待役割・能力・成果」の整理

  • プレイヤー層
  • マネジメント層
  • 上級管理職・経営層

について、

期待役割 → 能力蓄積 → 能力発揮・成果

を整理できます。

シート2|評価項目・評価基準への落とし込み

期待役割
→ 具体的な行動・状態
→ 評価項目
→ 期待水準
→ 一段高い評価に値する状態

まで整理できます。

記入例・チェックリストも付けています。

無料ワークシートのお申込み

会社名・メールアドレスをご入力ください。送信後、ExcelワークシートのダウンロードURLをメールでお送りします。

    人事評価制度を「何から整理するか」を一緒に明確にしませんか?

    評価制度を見直そうとしても、

    • 評価項目以前に、階層ごとの役割が整理できていない
    • 管理職に何を求めるか、社内で意見がまとまらない
    • 評価と等級・賃金のつながりが複雑になっている

    といったケースは少なくありません。

    株式会社せんだ兄弟社では、制度をいきなり作り始めるのではなく、

    現在どこに問題があり、何から整理すべきなのか

    を明確にするところから支援しています。

    評価項目を等級・賃金・育成までつなげて一貫した制度にしたい方は、人事制度構築支援もご覧ください。

    この記事を書いた人

    専田 政樹

    株式会社せんだ兄弟社 代表取締役/中小企業診断士。7&iグループにて店舗運営、スタッフ教育、マーケティング、管理部門長、労働組合中央執行委員などを歴任し、現場と本部、従業員側と経営側の双方を実務として経験。現在は組織人事コンサルタントとして、人事評価制度構築から新人・管理職の育成まで、経営方針と人材育成を一連の流れとして設計・伴走支援している。年間登壇数100日超。育成人数は延べ2000人/年。著書『働き方改革時代の若手部下育成術』。