「3C分析をやってみたけれど、結局この後どうすれば良いのか分からない……」
こんな経験はないでしょうか。
顧客について調べた。
競合店についても調べた。
自社の強みや弱みも書き出した。
情報はたくさん集まった。
ところが最後に、
「で……これやったはいいけど、このあと結局どうすればいいの?」
分析をした後、答えに詰まってしまう。
3C分析でよくある失敗パターンです。
なぜこんなことになってしまうのでしょうか。
私は、3C分析そのものが難しいというより、何のために分析をしようとしているのかを意識せず、3つの情報を集めることが目的になってしまっているケースが多いからだと考えています。
3C分析は、
収集した情報を3つの切り口で分類するフレームワークではありません。
Customer、Competitor、Companyという3つの視点を使い、
「ターゲットとなるお客様から見て、自社と競合のどちらが、どの点で優れているのか」
を比較評価し、自社の強みや課題を明らかにして、競争優位を意図的に生み出すための戦略を立案することを目的とした分析です。
ここを外すと、いくらたくさんの情報を集めても、分析結果はなかなか戦略につながりません。
小売業の利益改善を全体から整理したい方は、「小売業の利益改善をすすめる7つのSTEP」もあわせてご覧ください。
1.3C分析とは?
まず基本から確認しましょう。
3Cとは、次の3つの頭文字を取ったものです。
- Customer:顧客
- Competitor:競合
- Company:自社
ここだけを見ると、
「顧客を調べる」
「競合を調べる」
「自社を調べる」
という3つの作業に見えます。
もちろん間違いではありません。
しかし、ここで3つを別々に分析して終わってしまうと、3C分析の効果はかなり薄くなります。
重要なのは、この3つをつなげることです。
特に小売業では、
誰をメインターゲットにするのか
※来てくれるお客様は全員ウェルカムであることを前提に、特に意図的に支持を高めたい層がメインターゲットです。
↓
そのお客様は何を基準に店を選ぶのか
↓
その基準で自店と競合店を比較するとどうなのか
という順番で考えていくことが重要です。

2.まず「誰から見た3Cなのか」を決める
最初に考えたいのがCustomerです。
ここでよくあるのが、
「当店のお客様」
くらいの大きな括りで終わってしまうケースです。
しかし、お客様によって店を選ぶ基準は違います。
例えば食品スーパーなら、
- 子育て中の共働き世帯
- 高齢者世帯
- 単身者
- 食へのこだわりが強い層
- 価格を重視する層
では、同じ店を見ても評価は変わります。
共働き世帯なら、
「短時間で買い物できる」
「惣菜が充実している」
「夕方でも欠品していない」
ことを重視するかもしれません。
一方、価格を重視するお客様なら、売場の演出よりも日常的な価格水準を重視するでしょう。
つまり、ターゲットが変われば、競合との比較項目も変わるのです。
ここが3C分析のスタート地点です。
ポイントは、
「既存顧客=今来てくれているお客様」だけを見るのではなく、今後より支持を高めていきたいメインターゲットの目線で考えること
です。

3.そのお客様はどこを見て自店と競合店を比較しているか
ターゲットを決めたら、次に考えるのが、
お客様は何を見て店を選んでいるのかを考えます。
例えば、マーケティングの4Pに沿って落とし込んでみます。
(1)Product面
- 品揃の幅や深さ
- 品質
- 鮮度
- 専門性
(2)Price面
- NB商品の価格比較
- 価格帯(取り扱う範囲)
(3)Place面
- 買い物のしやすさ
- 売場の分かりやすさ
- 店舗へのアクセス
(4)Promotion面
- 接客
- サービス
- 広告・宣伝
などが考えられます。
ただし、この項目を最初から決め打ちする必要はありません。
重要なのは、
ターゲット顧客が店を選ぶ際に、本当に重視している項目なのか
を考えることです。
例えば、高級食材を求めているお客様に対して、
「地域最安値の商品が多い」
という項目を中心に比較しても、あまり意味がありません。
反対に日常の低価格を重視するお客様に、高級ワインの品揃えを強みとして訴えても響きにくいでしょう。
自分たちが比べたい項目ではなく、お客様が比べている項目を考える。
ここが非常に重要です。

4.競合分析の要因は「お客様から見えるもの」し、実際に分析する
ここからCompetitor、競合分析に入ります。
自社については、調べようと思えばかなり細かな情報まで把握することができます。
売上高、値入率、粗利益率、営業利益率、従業員数、組織体制、物流、仕入方法など、社内にある情報を使えば詳しく分析することが可能です。
一方、競合店についてはそうはいきません。
店舗別の売上や粗利益、営業利益、仕入条件など、競合企業の内部にある詳しい情報を通常の方法で把握することは困難です。
ここで注意したいのが、自社だけが把握できる情報を、そのまま競合との比較項目に入れないことです。
こうした項目を入れてしまうと、自社と競合を同じ物差しで比較評価することができなくなり、3C分析そのものの機能をマヒさせてしまいます。
3C分析では、まず、
「ターゲット顧客からの支持をどう高めるか」
という視点に絞って分析します。
一方で、得られた顧客支持(客数・売上など)を、どれだけ上手く利益として残していくかは別の論点です。
こちらは、
- 業務をどのように効率的に進めるか
- コストをどうコントロールするか
- 生産性をどう高めるか
といった、自社業務のマネジメントという視点で別途分析する。
つまり、
顧客からどう支持を得るか
と、
得た支持からどう利益を残すか
を切り分けて考えるのです。
この2つを混ぜずに整理することで、それぞれの分析とアクションが機能するようになります。
そのため、3C分析における競合分析では、
お客様と同じ立場で、外から見て分かる情報を使って比較する
ことが基本になります。
例えば、
「競合店は惣菜の品揃えが豊富」
「競合店の方が価格が安い」
「競合店はレジ待ちが少ない」
という情報です。
これらは、お客様が実際に店を利用する中で直接感じ取ることができます。
我々も競合店の内部情報をすべて知っているわけではありません。
外から見える情報を、お客様の視点に立って収集し、それを比較・分析する。
そして、その情報から競合店がお客様にどのような価値を提供しているのかを読み解いていく。
これが3C分析における競合分析の基本です。
5.仕上げは「まったく同じ項目」で、自社分析を行う
そして、ここが今回一番お伝えしたいところです。
競合分析が終わったら、Company、自社分析を行います。
この時、
競合分析とは別の項目で自社分析を始めてはいけません。
例えば競合について、
- 品揃え
- 価格
- 鮮度
- 接客
- 利便性
を調べたとします。
ところが自社になると、
- 従業員のチームワーク
- 長年培ったノウハウ
- 店長の経験
- 社内教育体制
- 収益性
などを挙げ始める。
これでは比較になりません。
Aさんは身長が○センチ。
Bさんは体重が○キロ。
どっちが勝っていますか?
と聞いているようなものです。
3C分析で自社と競合を比較するときは、例えば次のように同じ物差しで横に並べることが重要です。
| お客様の比較項目 | 自店 | 競合店 |
| 品揃えが○○ | ◎ | ○ |
| 価格対価値の納得度 | △ | ◎ |
| 鮮度(冷蔵庫で長持ち) | ◎ | ○ |
| 量目が選べる | ○ | ◎ |
| 応対の感じの良さ | ◎ | △ |
こうすると一気に見えてきます。
「価格では負けている」
「しかし鮮度と接客では優位性がある」
「ターゲット顧客が鮮度を重視しているなら、ここはもっと伸ばせるのではないか」
といった具合です。
ようやく分析結果が動き始めます。
実際に3C分析をやってみたい方へ
ここまでご紹介した考え方を、そのまま実務で使えるように「競合直接比較型3C分析フォーマット」を作成しました。
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6.分析のポイント
「自社が得意」だから強みなのではない
もう一つ注意したいことがあります。
自社分析をすると、
「うちは○○が強みです」
という言葉がたくさん出てきます。
しかし、
自社が得意なこと=強み
とは限りません。
例えば、
「うちは接客教育に力を入れている」
とします。
社内では相当な時間をかけて教育している。
しかし、お客様から見ると競合店とほとんど違いを感じない。
これでは少なくとも3C分析上、大きな強みとは言いにくいでしょう。
一方、
「魚の鮮度が圧倒的に良い」
という評価をお客様から得ていて、競合店との差も明確ならどうでしょう。
こちらは強みになる可能性が高い。
つまり強みとは、
ターゲット顧客が価値を感じ、かつ競合と比較して優位性があるもの
と考えた方が分かりやすいでしょう。
だからこそ、Customerを起点にして、自社と競合を同じ項目で比較する必要があるのです。
7.3C分析の結果から「勝ち筋」が見えてくる
ここまで整理できると、3C分析が単なる現状把握から戦略立案へ変わってきます。
例えば、
ターゲット顧客
忙しい共働き世帯
重視していること
短時間で夕食の買い物を済ませたい
競合
価格は安いが、夕方の即食・簡便商品の品揃えが弱い
自店
価格帯は特に安いわけではないが、夕方の惣菜・簡便商品の品揃えが強く、品切れも少ない
となれば、
「共働き世帯の夕食需要に強い店」
という方向性が見えてきます。
ここまで来ると、
「では惣菜をさらにどう強化するか」
「売場をどう見せるか」
「どの時間帯に品揃えを厚くするか」
といった具体的な戦略・戦術へつなげることができます。
3C分析は、この勝ち筋を見つけるための土台なのです。
※具体的な店舗戦略への落とし込み方については、別の記事で改めて詳しく取り上げたいと思います。
3C分析については、これまで「STEP5 3C分析を使いこなして強みを強化」シリーズでも詳しく取り上げています。
8.3C分析でよくある4つの失敗
最後に、よくある失敗を整理しておきましょう。
(1)自社と競合で比較項目が違う
最も多い失敗です。
項目が違えば、優劣を評価できません。
情報量は増えても、
「結局何が強いの?」
という状態になります。
(2)お客様から見えないものを比較している
利益、組織体制、業務効率など、経営上重要な情報はたくさんあります。
しかし、それらは別途、自社業務のマネジメントという視点で分析すべきものです。
3C分析では、
お客様が認識できる価値
に絞る方が分析の論点が明確になります。
「顧客からの支持をどう高めるか」と「その支持からどう利益を残すか」を分けて考えることがポイントです。
(3)ターゲット顧客が曖昧
「すべてのお客様」を対象にすると、評価基準も平均化します。
結果として、
「価格も大事、品質も大事、サービスも大事……」
となり、結局何を強化すべきか分かりません。
まず、
誰から支持されたいのか
を考えることが重要です。
その上で、地域でNo.1を取りにいく領域を考えていきます。
(4)自社が得意なものをそのまま「強み」としている
自社が得意でも、お客様が価値を感じていなければ強みにはなりません。
また、お客様が価値を感じていても、競合の方が優れていれば差別化要素にはなりません。
だからこそ、
Customer × Competitor × Company
の3つをつなげて考える必要があります。
9.結論:3C分析は「比較・評価」して初めて効能が生まれる
3C分析というと、
Customerを書いて、
Competitorを書いて、
Companyを書く。
そんなフォーマットをイメージする方も多いでしょう。
しかし、本当に重要なのはその先です。
3C分析は収集した情報を3つの切り口で分類するフレームワークではありません。
ターゲット顧客の視点に立ち、
「お客様は何を基準に選んでいるのか」
を考える。
その同じ基準で自社と競合を横に並べる。
そして、
「どこで勝っているのか」
「どこで負けているのか」
「どこを伸ばせば、お客様からもっと支持されるのか」
を考える。
ここまでやって初めて、3C分析が店舗戦略を考えるための道具になります。
分析は、情報を集めてきれいな表を作ることが目的ではありません。
次に何をするかを決められてこそ、分析した意味がある。
3C分析を実施する際には、ぜひこの点を意識してみてください。
3C分析を「分かった」で終わらせず、実務で使える状態に
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